省エネ後進国ニッポン

先日日経新聞に「省エネ適合義務化を住宅は見送り、市場低迷に配慮」との記事がありました。
これは2012年に出された「2020年までに全ての新築建築物に新省エネ基準適合を義務化する」と言う方針を見送ったということです。現在でも省エネ基準はありますが義務ではなく、基準を満たすかどうかは建て主の意思です。義務化の方針を聞いてついに日本もここまで来たかと業界では話題になったのですが、見送りとの報道を見て少々がっかりしました。


意外かもしれませんが、はっきり言って日本は建築の省エネ性能に関しては後進国です!

残念ながら人々の関心、認識も高くはありません。
野村総合研究所の資料によると、欧州各国などOECD加盟国34か国中28か国で全ての新築建築物に省エネ基準順守が義務付けられているのですが、日本は先進国の中では数少ない義務化されていない国の1つなのです。

そして今回の見送りですから後進国のレッテルはそのままということになりますね。

様々な分野の省エネに関しては先端を行っているイメージの日本なのにどうしてなんでしょうか?

ちなみに以前訪問したドイツでは、義務化された新築住宅に対する省エネ基準が非常に厳しく、日本人ガイド曰く「日本の東北地方で暖房なしで冬過ごせるレベル」というから随分状況が異なるものです。


興味深いデータがあります。

katei-thumb.jpg

少し古いデータですが欧米諸国と日本との家庭の消費エネルギーを比較したものです。暖房、給湯、調理、照明家電、冷房の中で赤い部分が暖房エネルギーを示していますが、日本は他の国に比べてその割合が非常に少ないことがわかります。

少ないということはそれだけ日本人は節約志向でエネルギー消費を抑えている、日本の家は暖房効率が良く省エネがきている・・・と思うかもしれませんが、そう単純な話でもないのです。


欧米では家全体を丸ごと暖房する“全館連続暖房”が一般的です。日本のように付けたり消したりはしません。
外は雪が積もって寒くても家の中は暖かくTシャツ1枚でも過ごせるといった生活が普通なのです。
日本人の我々からみると随分贅沢な感じがしますが、暖房エネルギーを大量に使っているのは欧米の人々はそれだけ冬の間快適な生活をしていることを表しているのです。

一方日本はどうでしょうか。
長年世界第2位の経済大国を誇り、生活水準、文化水準ともに世界でもトップレベルの日本ですが、暖房生活に関しては僕が子供の頃の40年前と基本的には何も変わっていません。
人のいる部屋だけ、いる時だけ暖房のスイッチを入れる、外出する時は消す、帰ってきたら付ける・・・ですよね。

それが普通で何が問題なの??
日本人は我慢することが美徳、節約して何が悪い??
と怒られるかもしれません。

でも家の中でも寒くてダウンジャケットが手放せない・・
朝起きるのが辛い・・
外から帰ってきて暖房が効くまでの時間がかかる・・・

このような経験をしている方たくさんいると思います。

我慢していても健康ならまだ良いですが、この温度差が原因で健康を害する方もたくさんいます。
「ヒートショック」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
暖房している部屋と暖房していないトイレや浴室などとの温度差に血圧が急変してしまう事故で、年間17000人もの方が実際死亡しているのです。

日本がまだ貧しかった戦後間もないころならまだしも、豊かな今なぜ欧米各国とこんなに暖房事情が異なるのでしょうか。


いくつか要因が考えられます。
・昔から暖房と言えば火鉢やこたつ、ストーブといった局所暖房だった
・局所冷暖房機(エアコン)を家電メーカーがこぞって開発、販売してきた
・オイルショックなどを経てエネルギーの大半を輸出に頼る日本では、人のいない部屋を暖房することは“ムダ使い”、”もったいない”、”贅沢”という認識が強い
・光熱費が高い
・住宅の省エネ性能が低い

しかし一番の要因は、”建物全体を暖房することなど考えたこともない”つまり認識がないということではないでしょうか。

寒い冬でも建物内は暖かく快適、健康で豊かな生活を送ってもらいたい・・・これは住宅メーカーとしての我々の強い想いですが、そのためにもまず一般の方々の認識を変えていかなければならないと思っています。
「省エネ基準義務化」はその1つのきっかけになると考えていただけに、今回の見送りは非常に残念と言うわけです。

先ほどのグラフを見て、日本人はそもそも節約志向が強く暖房費をそれだけ使わないのだから、家の性能はいまのままで十分。性能を上げてたとしてもエネルギー消費が減ることはない・・・と考える人がいたとしたら大変不幸な事です。
住宅の性能を高めることで、消費エネルギーをそれほど上げなくても欧米並みの快適で健康的な生活を送れるようにしていくのがこれからの日本には求められているのではないでしょうか!


実際4年前に新築した我が家は“全館冷暖房”を設置しました。
夏は冷房、冬は暖房、それ以外の季節も空調が常時作動していてフレッシュな空気を家の中に取り込んでくれています。
その結果、冬は建物全体が約20℃、夏は25℃にキープされていつも快適です。
着替える時も入浴する時も全く寒くありません。普段は長袖Tシャツ1枚で過ごせますし、パジャマ1枚でも十分です。
朝目覚めた時も、外出先から帰った時もいつも適温にキープされていますから、不快感やストレスとは無縁です。
夏暑くて寝付けないということもありませんので、極めて健康的です。

この環境を実現するためには建物の断熱気密性能がとても重要になります。
我が家はアクアフォームを使って業界でトップレベルの高気密高断熱住宅としています。

光熱費が高いのでは・・・???
いえいえ、そんなことはありません。

約60坪の我が家の冷暖房+空調にかかる光熱費(電気代)は月平均1.5万円です。
これだけ快適で健康的な生活を送るための対価としては決して高いと思いません。
むしと安いと思うくらいです。
なぜなら以前住んでいた断熱気密性能が一般レベルの家では、局所暖房だったにも拘らず同じかそれ以上にかかっていたからです。
一般的な35坪の面積なら月1万円程度で済むのではないでしょうか。


元々の光熱費が高く、欧米のような生活は日本では無理と思っているかもしれませんが、決してそんなことはないのです。
日本の住宅性能も技術もそこまで追いついてきているのです。

今はまだ若いから将来歳を取ったときにリフォームで考えれば良い思う方もいるでしょう。
もちろんリフォームで建物の性能アップを図ることももちろん可能です。しかし建物全体の断熱気密工事を行うとなれば壁、床をはがしての大工事となりますので1000万程度の費用は掛かってきます。
もし新築を考えているのであれば、新築時にしっかりとした省エネ性能を確保することが何よりも賢明だと思います。

まずは冷暖房や住宅性能に対する意識を変えていくということが重要ではないでしょうか。


野村総合研究所「住宅省エネ基準の国際比較と更なる省エネ化に向けて」
http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/region/2015/ck20150102.pdf#search='%E6%96%B0%E7%AF%89%E4%BD%8F%E5%AE%85%E7%9C%81%E3%82%A8%E3%83%8D%E6%80%A7%E8%83%BD+%E6%AF%94%E8%BC%83'


住環境計画研究所「生活者から見たエネルギー問題」
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_problem_committee/004/pdf/4-51.pdf#search='%E4%B8%96%E5%B8%AF%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F+%E4%BD%8F%E7%92%B0%E5%A2%83%E8%A8%88%E7%94%BB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80'
















 

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近藤 昭(株)桧家ホールディングス 代表取締役社長 近藤 昭

1967年兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学卒業。 大学卒業後、大手生命保険会社や外資系保険会社勤務を経て、 2001年に東日本ニューハウス(現・桧家ホールディングス)に入社。 専務取締役、副社長を経て、2009年に代表取締役社長就任。 2012年に『日経ヴェリタス』が行った「在任期間中に株価を最も 上げた社長のランキング」では、全上場会社中第5位にランクイン。 業界の常識にとらわれず、常に顧客目線で考えることがモットー。 「あらゆる人にエコで快適な住まいを」 提供するために日々奮闘中。

   

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